ご先祖様をお迎えする盆飾りについて│飾り方から片付けまで説明

お盆といえばお墓参りというイメージが強いでしょうが、それだけではなく日本には庭や仏壇の前に盆棚を置き、位牌や供物などを飾る盆飾りという伝統的な風習があります。

お盆といえばお墓参りというイメージが強いでしょうが、それだけではなく日本には庭や仏壇の前に盆棚を置き、位牌や供物などを飾る盆飾りという伝統的な風習があります。

昔はどこの家でもよく見かける風景でしたが、現代では住宅事情もあり簡略化されることが増えてきました。盆飾りは地方や宗派によっても異なりますが、ここでは一般的な仏壇前の盆飾りを例にその意味と飾り方をご紹介します。

盆飾りの目的

お盆は仏教の多くの宗派では、ご先祖様が浄土から地上に降りてきてひととき子孫と過ごす期間とされています。盆飾りはそんなお盆に帰ってくるご先祖様の霊を導き、さまざまな飾りや供物でもてなすものです。

浄土真宗だけが盆飾りをしない理由

仏教の多くの宗派では、お盆のいわれは地獄に落ちた人を救う盂蘭盆会の説話が元になっています。その説話では地獄に落ちた母親を助けるために、息子が僧侶にもてなしをすることで徳を積むというシーンが出てきますが、盆飾りはその話と祖先崇拝の心が結びついたものです。

しかし仏教の中で唯一、浄土真宗だけは盆飾りをしません。それは浄土真宗では、今生きていることに対して先祖に感謝をしますが、人は亡くなればすぐ仏になるので霊魂が現世に里帰りをすることはないと考えるからです。そうした意味から浄土真宗ではお盆はご先祖様に感謝をし、命の大切さをあらためて考える日とし、霊を迎える盆飾りはしないことが一般的となっています。

ただし地域の風習によっては盆提灯を飾ることはあるようです。

盆飾りはいつからいつまで飾るもの?

お盆は地方によって7月に行われる場合と8月に行われる場合があります。いずれも13日から16日の4日間の間でお墓参りや親戚の集まりなどを行いますが、盆飾りはその期間中飾っておきましょう。

ただし49日の喪明け後初めて迎える新盆の場合は、もう少し早めに盆飾りを出すことが多く、中でも盆提灯はお盆の月の初旬から出してもよいとされています。

盆飾りが初めての場合は、購入するものや作るものなど何かと準備に時間がかかるので、早めに計画を立てお盆の前日までには設置が済むようにします。

盆飾りの設置する場所や飾るものの内容は決まっている?

盆飾りの設置場所は仏間の縁側に面した庭という場合もありますが、近年は庭がなかったりマンション住まいだったりも多いため、仏壇の前や中に飾ることが増えています。ご先祖様をお迎えし供養する気持ちに変わりがなければ、場所や規模、飾る品々にあまりこだわる必要はありません。

盆飾りの中には「なぜこれが必要?」と不思議に感じるものもあるでしょう。しかしその一つひとつにはきちんと意味が込められているものです。まずそれぞれの意味を知った上で簡略化やアレンジすることをおすすめします。

盆棚づくり

盆飾りは土台となる盆棚と、その上に飾る仏具や供物から構成されています。それでは仏壇前の盆飾りを例に、盆棚づくりから解説していきましょう。

盆棚 マコモのゴザ

盆棚は組み立て式の壇状ものがよく使われますが、座卓やテーブルでも代用できます。通常は仏壇の前に設置しますが、スペースがない場合は正面ではなく横に設置しても構いません。

盆棚の上にマコモという植物で編んだゴザを敷きます。これは、お釈迦様がマコモで作った寝床で病人を治療したことが由来となっています。

笹竹 縄 ホオズキ

盆棚の四隅に笹竹を立て、上部に縄を張ります。これは結界といい、ご先祖様が戻ってきたときに休んでもらう場所に見立てたものです。笹竹は四隅ではなく左右2本だけ立てたり、スペースがなければ盆棚の上に小さな笹を1本置いたり、だけでもよいでしょう。

結界の上部に張った縄には枝つきのホオズキを吊るします。ホオズキは赤い色と膨らんだ形状から提灯に見立てたもので、ご先祖様が戻る場所の目印にします。ホオズキは吊るす場所がなければ花瓶に挿したり皿に盛ったりしても構いません。

盆提灯

盆提灯はホオヅキ同様、ご先祖様が戻ってくるときに迷わないための目印として飾ります。盆提灯には床置きの大内行灯と吊り提灯がありますが、地域性や好み、スペースでいずれかまたは両方を設置します。大内行灯の場合は盆棚の両脇に設置しますが、必ずしも一対である必要はなくスペースに応じ1台でも構いません。

吊り提灯は部屋の天井や長押に吊るします。新盆の場合、親戚や友人が模様のない白提灯を贈るという風習もありますが、贈り手は相手の家の事情を考え早めに連絡をしてから贈りましょう。

盆棚に飾る仏具

普段は仏壇の中に収まっている仏具ですが、お盆の間は先祖の霊を迎えやすいように位牌などを盆棚の上に移動します。

位牌

位牌は盆棚の最上段中央に配します。位牌が複数ある場合は宗派によって配置が異なることもあるので、僧侶に確認した方がよいでしょう。

その他の仏具

経机の上にリン、香炉、線香、火立て、ロウソク、生花などお参りに必要な仏具を並べます。

飾り物 供物

盆飾りには、普段の仏壇では供えないような飾り物や供物もあります。植物を使ったものがほとんどですが、それぞれに意味があるのでこれを機に覚えておくとよいでしょう。

精霊馬 そうめん

ご先祖様が帰ってくるときの乗り物として手作りするのが精霊馬です。キュウリとナスに割り箸を差し、キュウリは馬、ナスは牛に見立てます。馬はご先祖様が早く着くように、牛は名残を惜しみながらゆっくり帰るようにという意味で供えられているようです。

そうめんを供えるのは精霊馬の手綱とも、ご先祖様が浄土に帰るときに土産を束ねるためともいわれています。

水の子 閼伽水 ミソハギの花

水の子は、なんらかの事情で供養してもらえなかった霊や家が途絶えた霊に対しても広く供養しようという慈愛の意味が込められた供物です。作り方はキュウリとナスを細かく刻み、洗ったお米と混ぜて蓮の葉の上に盛りつけます。

供養のための清水を閼伽水と呼びます。昔は早朝に井戸から汲み上げた水を使いましたが、現在は水道水を使用しているでしょう。

ミソハギはピンクの花を咲かせる仏花で、喉の渇きを潤す効果があるといわれています。水の子と閼伽水、ミソハギは飢えと渇きを癒すものとしてセットで供えます。

御霊具膳

精進料理を盛り付けた御膳を仏壇と向き合うように供えます。

団子

13日にはお迎え団子、14日、15日はお供え団子(落ち着き団子)、最終日の16日にはご先祖様のお土産用として送り団子を供えます。数や味付けは宗派や好みで変わります。

その他

その他、季節の野菜や果物、菓子、故人の好物も並べるとよいでしょう。

基本の配置

まず盆棚の位置を決めマコモのゴザを敷き、それを囲むように結界を作ります。提灯を盆棚の両脇に据え、経机は盆棚の手前に置きその上に仏具を並べましょう。盆棚の最上段の中央に位牌を置き、両脇に花を飾ります。

精霊馬や供物はその下の段に置きますが、毎日取り替えなければならない供物に関しては、あまり奥よりも手前に置いた方が扱いやすいでしょう。

お盆飾りの片付け

盆飾りを片付けるタイミングは送り火の後です。送り火は一般的に16日の夕方から夜にかけて行うので、当日の夜か翌日を目処に片付けるとよいでしょう。

片付け方ですが、盆棚の台やマコモのゴザはきれいに拭いて乾燥させてから保管します。提灯も手入れをして保管し翌年以降もまた使いますが、新盆専用の白い提灯は今後使えないのでお焚き上げなどで処分します。笹竹やなどもお焚き上げが望ましいでしょうが、難しければ塩で清め可燃ゴミとして処分しましょう。食べ物に関しては、家族でおいしくいただくことがご先祖様の供養にもなります。

まとめ

ご紹介した盆飾りは基本であり、やや本格的な例です。しかし実際は各家の事情や宗派によって簡略化したり付け加えたり、あるいは他のものに変更する場合もあるでしょう。盆飾りは形式よりもご先祖様を思う気持ちが大切です。目的と飾るものの意味を知った上で、その家らしい盆飾りにしてみてください。

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